2005年1月 6日
欧米での企業ブログのケーススタディ
Webマーケティングの近未来 第20回~欧米での企業ブログのケーススタディ(その2)
もともと7頭の牛から始まったという強い個性を持つ企業が、現在は1800万カップのヨーグルトを毎月生産する企業へと急成長したが、その個性が十分に伝わっていないのではないかというのがCEO Gary Hirshberg氏の懸念であった。アメリカでの大統領選挙における政治ブログの活躍から、ブログがこのような啓蒙活動に最適なツールであるという結論に至り、今年4月、5つのブログを開始した(そのうち1つは止めており現在は4つ)。運営にはPRディレクターの下で、Christine Halvorson氏が1人で担当している。彼女はアメリカでもまだめずらしいオフィシャル企業ブロガーだ。
オフィシャル企業ブロガーという立場は、具体的にはどういうものなのでしょうか。企業公認でブログを書いているのは当然だと思うのですが、社内の人? それとも社外の人? いずれにしても、企業に公認されるだけの力量を持ち、一人で4つのブログを運営していくというのは大変なことだと思います。
内容として興味深いのは、ほぼすべてのポストに、同様の内容のメルマガの購読・解除の方法とRSSフィードの受け方へのリンク情報が入っている。
以下のような形で挿入されていますね。
ABOUT THE DAILY SCOOP
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To unsubscribe: drop a note to chalvorson@stonyfield.com
これは確かに興味深いです。恐らくは検索エンジンからの来訪者に向けた対策だと思いますが、ナビゲーション部分を極力減らし、記事を読んで貰うことに集中して貰い、記事の最後で注意を与えるという方法は効果的ではないでしょうか。毎日見ている人にとっては、意外に気にならないものではないかと思います。
コメント、トラックバックは公開しており、「誰が最初の米国女性大統領になるか」とか「神は男か女か」など議論になりそうな話題を提供するように心がけているという。
日本の企業では多くがコメントを閉じ、あえて議論が起こらないよう対策しているのとは反対です。これもまた、興味深いです。しかも、政治であったり宗教的な話題だったりするのですから。
さて最後に、トラフィックの量を見てみたい。すべてのブログを合計すると、6月からの総計で16万ビジター、また各ブログでは毎月4000から28000の間で、毎月徐々に伸びているという。また、これ以外にメルマガの購読者がそれぞれ数百から1700あるという。
この数字について「果たして売り上げ等に影響を与えているか」という問いにHalvorson氏は「通常のPRと同じで簡単には関係は測れないが、環境や健康に対する情報を送って消費者との関係を構築することで、スーパーの棚の前に立ったときにStonyfieldを選ぶ要因になるはず」とコメントしています。
オンラインからの直販だったりすれば効果測定も可能ですが、こうした製品の場合、さらにその他のマーケティングが行われてたりして具体的に説明するのは難しいところです。しかし、
・消費者との関係を構築
することで、
・スーパーの棚の前に立ったときにStonyfieldを選ぶ要因になるはず
というのはあながち間違ってはいないと思います。そのためのコメント欄であり、トラックバックだと思いますから。
ビズブロ界のキーマンに聞く!:第2回 P&G「I ♥(ラブ) 困ったさんコンテスト」で渡辺氏は、コンシューマ向け製品がキャンペーンにブログを用いる意味について次のようにコメントしています。
そう考えると、まずはテレビに代表されるようなマス広告が、現時点では一番有効な方法です。ただ、次のステップとして、商品を深く理解してもらう過程があって、その結果、商品なりサービスの“ファン”になってもらうことが、購買にたどり着く最後の後押しになる。今回の「困ったさん」コンテストを実施したことで、それを実現させるための1つの方法としてブログが新たに加わった実感はありますね。
このことを分かりやすく「テレビが顔面パンチだとしたら、ブログはローキックを地味に打ち続けてじわじわと追い込む、みたいな戦法かな」と例え、その後も「ブログで消費者のハートをガッチリつかめば、その後も持続性はあると思います」と続けています。現場の人の意見だけに、こうした実感は確かなものではないでしょうか。
記事では次のようにまとめいてます。
有機農法、環境、健康というスローライフ的な、あるいはソーシャルマーケティングに沿った商品・サービスでは、30秒CMや雑誌1ページの広告というよりは、このようにブログやメルマガを使ってコミュニティに語りかけて長期的に関係を構築していくことが有効なマーケティング手法であるという、ひとつの事例ではないだろうか。
日本でも今年は、ブログを取り入れたマーケティングというのは広まると思いますが、コメント欄をオープンにしてチャレンジする企業は果たして現れるでしょうか? ブログ自体がどのような使い方をされるか、にも注目していきたいと思います。
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